かるがもコラム ~母乳育児~


「乳房マッサージって必要?」
2017年4月18日(火)のブログより

 

先日、他施設で乳房マッサージを受けながら「大丈夫よ、母乳は出ているから」と言われ続けて、

赤ちゃんの体重が減ってしまった方が当院を受診されました。
このようなことが度々あるため、今回こちらで乳房マッサージについて書かせていただくことにしました。
 
当院はこのホームページにも明記してあるとおり、乳房マッサージを行っていません。
 
その理由は、ズバリ科学的な根拠がないからです
 

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こちらの参考書はたくさんの母乳育児の研究を元に作成されているものですが、

乳房マッサージについてはほんの数行しか書かれておりません。
 
その効果についても、明らかなものはないので明記されていません。
  
一般的に、日本で言う乳房マッサージは助産師が行うものをイメージされると思います。
私も以前は、母乳育児支援を行うためには乳房マッサージができないといけないと思っていました。
 
・乳房マッサージは母乳育児中のメンテナンスとして必要?
 
・乳房マッサージをすれば、母乳の量が増える??
 
・乳房マッサージをしないと、乳腺炎や乳管の詰まりは治らない???
 
しかし、その理論や方法は助産師養成課程で教わるものでもなく、参考書にも載っておらず、私は先輩の様子を見て

「見よう見まね」で行っていました。
 
私は自分なりに納得がいかなかったので、これは勉強しないといけないと思い、行き始めた学習会で得た知識は目からウロコ!
 
今まで先輩から教わってきた知識を授乳中のお母さんたちに伝えていましたが、間違った情報がたくさんあったことがわかり、

とても申し訳なく思いました。
 
母乳を増やすことも、乳腺炎などの乳房トラブルを防ぐことも、乳房トラブルを起こしたときにも、

適切な抱き方・含ませ方ができれば解決できるのです。
 
できるだけお母さんも赤ちゃんも授乳の方法を習得する前に適切な抱き方・含ませ方を確認し、必要があれば

修正していくことが重要と言われています。
 
そのためには、出産した施設を退院してからできるだけ早く、授乳の専門家に相談することが大切です。
 
そして「乳腺炎は、れっきとした病気」です。
 
助産師だけでは十分な経過観察ができない、もしくは医師による薬の処方が必要なこともあります。
 
乳腺炎に限らず、「炎症」という病態に対しての治療は基本的に「患部の安静」が必要です。
例えば、どこか擦り傷を負ってしまって赤く痛い部分、捻挫、やけどなども炎症が起こっている状態のひとつです。

これらの治療のために揉んだりマッサージしたりすることは、医療行為として行いません。とても痛いですし、

患部を悪化させてしまう可能性もあります。
乳腺炎も同じで、乳腺炎で痛い部分をマッサージすることは授乳中のデリケートな乳房にとって

状況を悪化させてしまう可能性もあり、注意が必要です。
 
乳腺炎の治療は
(1)授乳
(2)お母さんの身体を休ませる
(3)必要があれば抗生剤・消炎鎮痛剤を飲むこと です。
 
つまり…
 
乳腺炎≠乳房マッサージ
 
母乳が増える≠乳房マッサージ
 
です。
 
お母さん自身が心地良い程度に乳房をセルフマッサージすることは、もちろんOKですよ。
 
当院は科学的な根拠がある情報をもとに、授乳中のお母さん・赤ちゃんが混乱することのないよう、

医師と助産師が連携して支援をしています。
 
困ったことがあれば、授乳相談室でご相談に対応いたします。
 
【助産師/国際認定ラクテーション・コンサルタント(IBCLC) 中川】
【炎症について追記 院長 江田】


「母乳育児と歯」
2017年1月23日(月)のブログより

 

去年の秋の話ですが、助産師の中川さんと母乳育児支援の学習会に参加しました。
 
場所は埼玉県の川口駅からすぐです。
検索したら藤沢から1時間ちょっと、しかもお昼からの学習会なので、日帰りでも余裕で行けることが判明。
しかも演題のひとつが「母乳育児と歯」の話だったので、行かないわけにいかない…
 
今でも一部の歯医者さんは、母乳を飲んでいることがむし歯の原因だとおっしゃって、

断乳を勧めることがあるようですが、そのような科学的根拠は今のところないはず。。。
と思いながら、直接歯科医師のお話を聞いたことがなかったので、今回改めて確認に行って参りました。
 
風邪ひきな主人に息子2人を委ねて出発。
 

会場は大入り満員。
 
遅刻ギリギリの私に対し、必ず良い席を確保して待っていてくれる中川さん!
(前回の学習会もそうでした。今回も有難うございます!)
 
 
「母乳育児と歯」について確認してきたことは・・・
 
1、母乳とむし歯に関しては様々議論があるが、
母乳を飲んでいるからといって、むし歯になる確率が上がるとはいえない。
(母乳に含まれる糖分は「ショ糖」ではないため、虫歯菌のエサになりにくい)
 
2、授乳方法に関わらず、ご飯を食べるようになったら1日1回歯ブラシをすることが大切。
食べカスがついている歯に母乳がふれるとむし歯になるリスクが出るので、

特に寝かしつけの授乳の前には必ず歯みがきをする。
 
3、母乳を飲んでいる子どもは上顎の発達が良いため、

不正咬合(上下のかみ合わせが部分的に逆になる)になるリスクを下げる。
 
という科学的根拠のある事実でした。
 
やはり、母乳育児は歯にとって決して悪モノではないのですね。
 
 
歯については小児科でも色々と質問をいただきますが、我々医師は歯のことをあまり知りません。
奥歯が生えてきた頃からは、むし歯はないか、歯ブラシがうまく出来ているか、

ぜひかかりつけの歯科医院で定期的にみていただくことをお勧めします。
 
 
我が子の歯医者さん通院の様子はこちら
 
【院長 江田】


授乳中の花粉症対策
2016年2月5日(金)のブログより

 

花粉症の季節が近づいてきました。

母乳をあげているので、今年は薬をどうしようか…
薬を飲まないと症状がつらいので、断乳して薬を飲もうかな…

・・・などと、悩まれている方がいらっしゃると思います。


アレルギー症状を抑える抗ヒスタミン薬は、種類によって眠気や鎮静作用があらわれます。
それを飲んで授乳すると、お子さんにも同じような影響が出る可能性があります。
しかし、そのような影響が少ないお薬を選択することで、母乳育児を続けることができます。

今日はそのお薬についてご紹介したいと思います。

 

【1】抗ヒスタミン薬:アレグラ®、クラリチン®は眠気が出にくいお薬で、授乳中によく選択されます。

【2】点鼻・点眼薬:血液中には移行しないので、母乳にも移行しません。

【3】漢方薬:通常の用法・用量であれば問題ないとされています。成分が明記されていないものは避けることをお勧めします。


市販の鼻炎・総合感冒薬を内服する場合には、

有効成分の中に「塩酸プソイドエフェドリン」が入っているか必ず確認してください。

 

「塩酸プソイドエフェドリン」という成分は、母乳の分泌を減らす作用があることが分かっています。

多くは市販薬に含まれています。

お子さんの栄養がまだ母乳が主の月齢の場合は、この成分の入ったお薬の使用を避けることをお勧めします。

 

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授乳中のお薬については不安で、症状があっても我慢されている方も多いかと思います。

しかし、つらいのを我慢することは、ストレスにつながってしまいます。

お子さんへの影響が少ない薬を選択し、ぜひ授乳を継続しましょう。


【院長 江田】
【助産師・IBCLC 中川】


授乳中にインフルエンザにかかってしまったら…
2016年1月28日(木)のブログより

 

授乳中のお母さんがインフルエンザにかかってしまった場合、いったいどうしたらよいのでしょうか。


やっぱり子どもにうつしたらいけないから、そばにいたらいけないのかな…

母乳からうつったりするのかな…

授乳中だからお薬は飲めないよね…


などなど、心配はつきないと思います。


今回はその対策方法をお伝えします。

 

【1】まず一番大切なのは、授乳中のお母さんだけでなく、お子さんに接するご家族含めて、予防接種を行うことです。

ぜひ流行期に入る前に接種をお願いします。
(流行期に入ってから接種を始めることは無意味ではありませんが、効果が得られるまでに数週間かかります)

 

【2】もしお母さんがかかってしまった場合は、十分な手洗い、マスクの装着をお願いします。
授乳はいつも通り続けましょう。

つらい場合は添い乳をしたり、搾乳して家族に飲ませてもらうのもひとつの方法です。
家族の協力が得られれば、授乳以外のことは手伝ってもらいましょう。

 

【3】母乳からインフルエンザのウイルスが出ることはありません

また、他の風邪と同じように母乳から抗体が分泌されることを考えると、お子さんがインフルエンザにかかっても

軽い症状で済む可能性があります。

 

【4】抗インフルエンザ薬は、授乳中でも使用できる薬があります。

リレンザ®、イナビル®は吸入薬で母乳中にほとんど移行されませんので、授乳婦さんでも安全に使用できます。

タミフル®は1歳以上10歳未満のお子さんへも処方される薬です。
母乳に移行される量は大人が内服した量の0.5%程度ですので、子どもの治療量よりもはるかに少ないことが分かっており、

授乳によるお子さんへの悪影響はないと考えてよいでしょう。

 

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以上のことから、
母乳は中止する必要はなく、かえって母乳育児を継続することで、お子さんにもメリットがあります。
安心して母乳育児を続けてください。


【院長 江田】
【助産師 IBCLC 中川】


「妊娠と薬情報センターのフォーラムに参加しました」
2015年11月9日(月)

 

助産師・IBCLCの中川です。

 

11月3日に、国立成育医療研究センター主催の「妊娠と薬情報センター 開設10周年記念フォーラム」に参加してきました。

 

主に妊婦さんの管理についての内容が中心で、内容も医師・薬剤師向けでしたが、妊娠と授乳中の薬についてとても高名な伊藤真也先生の特別講演があったので、ぜひ聞いてみたいと思い、参加しました。

 

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伊藤先生はこの薬の本の編者でもあり、この本がなければ私たちは英語の本を読まなければなりませんので、

とても重宝しています。

 

伊藤先生の講義テーマは「妊娠・授乳中の薬物療法」 。その中で印象に残ったものをご紹介します。


妊娠しているときの身体の変化ですが…
・体重:15%増
・循環血液量:40%増
・心拍出量:40%増
・糸球体濾過率:50%増
・肝血流:50%増

と、体重の増加率に比べて、心臓・腎臓・肝臓への負担は増大します。
そのため、薬が同量でも、妊娠前とは代謝の様子が変化したりします。

 

もちろん妊娠中に薬を控えることは鉄則ですが、治療が必要な方が薬をやめてしまったり、

量や種類を変えてしまうことで、かえって病気の症状が悪化してしまうことがあるそうです。

このようなことから、持病のある方は妊娠中の管理が重要になってくることに納得しました。

 

また、その場にいらした薬剤師さんから「生後1週間は避けるようにと添付文書に書いてある薬を

お母さんが飲まなければならない場合、どうしたらよいか」という質問が出ました。

 

伊藤先生のお答えは、

「初乳の量はまだ少なく、母乳摂取量も相対的に少ない。赤ちゃんの薬の代謝の能力は徐々にあがるので、

授乳をやめる必要はない。赤ちゃんに薬の影響が出ていないか確認して、母乳は飲ませる。

薬の移行による影響を考えるよりも、赤ちゃんに母乳を飲ませることのほうがはるかにメリットがある」

でした。

このお答えが聞けて、本当にうれしく思いました。


妊娠中、授乳中のお薬は、誰しもが心配になることだと思います。

お母さんの健康管理を考えながら、お子さんにとって良い母乳を安心して飲ませられ、育児ができるように、

専門機関に相談することを選択肢にあげておくのも良いかもしれませんね。

 

妊娠・授乳中の薬の相談は国立成育医療研究センターの他、神奈川県内では横浜市立大学附属病院でも可能です。

もちろん当院から紹介することも可能ですので、心配事がありましたら、ぜひ相談にいらしてください。


【助産師 中川】


「妊娠中・授乳中の薬について ~WEBサイト紹介~」
2015年9月11日(金)のブログより


妊娠中・授乳中の薬について、ご心配されている女性・ご家族はたくさんいらっしゃると思います。

もともと持病のある方ですと、主治医に相談されたりするかもしれません。

安全性に問題のあるものはもちろん、変更してもらうことがベストです。

 

多くの添付文書には、妊娠中・授乳中には薬を控えるように書いてあります。
そのため、特に授乳中は医師や薬剤師から、該当する薬を飲む場合は授乳を中止するように言われることが多くあります。

そのように言われた場合、ぜひ「本当に授乳はダメなのか??」と、疑問を持っていただきたいと思います。

 

妊娠中・授乳中の薬について、適切な情報を提供している機関がいくつかありますので、ご紹介します。

 

大分県『母乳と薬剤』研究会

 ・国立成育医療研究センター 妊娠と薬情報センター

※成育医療研究センターは、電話でのお問い合わせも可能です。

 

サイトをみていただくとお分かりになると思いますが、絶対に使えない薬のほうが、使える薬よりはるかに少ないです。

 

また、日本病院薬剤師会が「妊婦・授乳婦専門薬剤師」という専門薬剤師の認定を始めています。
まだまだ数が少ないようですが、このような専門家を頼るのもひとつかもしれません。
医師や国際認定ラクテーション・コンサルタントに相談するのも良いでしょう。

 

赤ちゃんの状態によっては授乳中のお薬を慎重に選ばなければならない場合もありますが、薬を飲みながら母乳育児を行うことも可能です。
「薬を飲んでいるから無理かな」と思わずに、ぜひ専門機関に相談してください。

今後も、役立つ薬の情報を提供していきたいと思います。

 

【院長 江田】
【助産師 国際認定ラクテーション・コンサルタント 中川】